とにかくそばに居ること。居させること。

吉永 陽一 先生
取材班:
先生は生徒を指導するにあたり、どのような点に気をつけていらっしゃいますか?
吉永先生:
当たり前のことですけど「生徒が練習しているときにできる限り生徒のそばに居る」ことです。そばに居るとそれぞれの生徒が抱える問題点がよくわかります。このことでいろいろな問題を解決する糸口が見つかるもんなんですよ。休日などで部屋でお昼を食べている時にも、生徒は練習をしています。聞こえてくる音を聞いて「音程悪いな」と思ったら、箸を止めて窓を開けて生徒に声をかけたり足を運びます。また生徒にはこう言ってあります。「できるだけ僕に聞こえるところで練習するように、そうすれば声をかけられるから。物陰に隠れて聞こえんような練習はやめてな」と。生徒も僕に「何を言われるか分からん」という不安を抱きながらも、「何かアドバイスをしてもらえるわ」という期待から、努めて近くで練習しますね。生徒の指導はそんなことの積み重ねですわ。でも残念なことに年を取るにつれ会議等が増え、これがどんどん難しくなってくるんです。そういった中で僕が生徒たちの指導を集中してあげられる一番の時期はやはり夏休みを含むコンクールシーズンです。5月から8月、この間に1年分のやるべきことは何かということを生徒たちにみっちり見せて、9月以降はその経験を踏まえて「自分たちでやってみて」って言うんです。教師が生徒の身近にいるから、分からないことは聞きに来ればいいし、時間ができればこちらからも行く。だからコンクールの功罪は百も承知ですけど、僕はこの期間に生徒たちとの距離をできるだけ縮めていこうと心掛けているんです。もう一つ付け加えなければいけないのは、教師はダメ出しをします。しかしダメの出しっぱなしはダメ。ダメ出しをした教師もダメを出された生徒もストレスを溜めます。そのストレスから生徒をどうすれば解き放してやれるかを工夫してやることが大切。教師の「よし!」の一言をどれほど生徒は待ち望んでいるか。その瞬間、生徒の表情に大きな変化が現れます。その生徒の変化を見ることが出来るのが教師の特権。医者は病人を診察する。診察だけでは病気は直らない。医者は病人に効く薬を調合して病気を直す。回復した病人は健康を取り戻す。同様に教師は生徒の問題点を指摘し、問題に合わせてアドバイスする。アドバイスが効いて生徒の表情に自信が湧くのを見て教師の役目を果たす。難しいのはアドバイスの内容やね。すべての教師は生徒の成長を願っています。そしてこのアドバイスに苦労しています。でも、生徒のそばに居てやることで結構的確なアドバイスができたように思います。