6:00 学校に集合 ~ 練習開始

兵庫県立農業高等学校 吹奏楽部

いよいよコンクール県大会本番当日。前日も午後8時までの練習を行い、準備万端。当日は本番までの限られた時間を利用するべく早朝から部室に全員集合。今まで練習してきたことの最終確認や曲の細かな最終調整を行なう。みんなの目を覚まさせるためか気持ちを引き締めるためか、 早朝から教室内に合田先生の大きな声が走る。「自信を持って!」「一人ひとりが自分の責任を果たさないと!」「全員で同じ表現をしないと!」。先生の気合いの入った一言ひと言に、生徒達の「はい!」という返答にも力が入る。
コンクール会場であるアルカイックホール(尼崎市)に向けたバスの出発時間が迫る中、先生も生徒達も時間ギリギリまで最終確認に余念がない。楽器を運ぶトラックや移動バスが学校に到着してもまだ合奏は終わらない。結局、合奏終了予定時間を数十分オーバーして終了。最後に先生から「練習はこれで終わりだけど、バス移動の間もしっかりイメージトレーニングして!」と檄が飛ぶ。

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8:40 楽器の搬出

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ティンパニ・バスドラム・シロフォン・マリンバ・グロッケン・チャイムといった大きなパーカッションから順番に、校舎4階の音楽室からトラックの待つ1階まで、階段の上り下りを繰り返し全員で協力して運び出していく。女子の多い吹奏楽部でパーカッションやチューバ、コントラバスを1階に下ろすのは本当に大変そう。1階正面玄関では副部長が楽器の確認を行いながら、次々とトラックへの積み込みの指示をする。その指示を受けて、楽器屋さんと男子生徒2人がトラックに積み込んでいく。なかなか手馴れたものだ。最後にクラリネットやトランペットなどの数の多いコンパクトな楽器も、しっかり数量を確認の上、積み込みが全て完了!

9:05 バスで出発(加古川市→尼崎市)

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全員がバスに乗り込み、学校を出発。バスが動き出して早々、先生から「高速道路が混んでいるので、最悪アルカイックホールに到着次第すぐに受付になるかも!バスの中ではあまり騒がず、しっかり体力を温存しておくように!」との指示が出る。最初はポツポツ聴こえていた車内の話し声も、やがて静かな寝息に。幸いなことにバスは渋滞に巻き込まれることなく順調に進み、途中パーキングエリアで20分ほど休憩。その後再びバスはアルカイックホールに向けて出発。
バスがコンクール会場に近づくのがわかると、部長が声を上げた。「会場に着いたらいったん控え室に自分のカバンを置きに行って、それからすぐに楽器の搬入口へ移動。楽器をトラックから運び出してください。それと、コンクール本番は舞台上のセッティングに与えられた時間は3分。それを超えるとたとえ準備が出来ていなくても舞台上はライトアップされてしまうので、出来るだけ急いで準備に取り掛かってください!」と、コンクール本番までの段取りをみんなに伝える。

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10:40 会場へ到着 ~ 楽器の搬入

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兵庫県吹奏楽コンクール県大会の会場である、アルカイックホール(尼崎市)に到着。まずはコンクール出場者の控え室へ。控え室は大きなホールとなっており、何校かが同時に利用できるようにブロックに区切られている。周りは同じくコンクールに出場する他校の生徒達が楽器の手入れをしたり、しばしくつろぎながらリハーサルの開始時間まで待機している。

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カバンを置くと、すぐさま楽器搬入口へ向かう。廊下の移動中に他校の生徒を見かけないことはない。楽器を運ぶ生徒、リハーサル室へ向かう生徒、本番の舞台へ向かう生徒・・・狭い廊下を複数の学校が譲り合いながら行き交っている。お互いに目が合うと「こんにちは」と挨拶を交わしながらすれ違う。どの学校も礼儀正しいと感心する。
東阪神吹奏楽連盟に所属する高校生ボランティアがあちらこちらに配備され、会場内の誘導や時間管理を行なってくれている。 これらのコンクールの一種独特の雰囲気に、私達取材スタッフも気持ちが高ぶると同時に緊張感が増す。
トラックから楽器を降ろし、パーカッションなど大きな楽器は舞台に近い保管場所へ、その他の楽器は先程の控え室へ運ぶ。県農の2・3年生は高校A部門で昨年に引き続き2年連続の県大会出場ということもあり、てきぱきと1年生を引っ張っている。やはり経験者は頼もしい限りだ。

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11:15 控え室

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トラックから楽器を下ろし終えると再び控え室に戻り、各自自分の楽器をケースから出して準備を行なう。県立農業高等学校の出番は13番目で午前の部の一番最後。同じ控え室では一つ前の仁川学院中学高等学校がすでに準備を終え、列に並びながらみんなでミーティングを行なっている。その列の隣に同じように並び、県立農業高等学校もチューニングの順番を待つ。合田先生も本番用の正装に着替えて登場。みんなの気も引き締まる。

部長がみんなの前でこれからの予定を確認。仁川学院中学高等学校がチューニング室に移動すると、控え室は県立農業高等学校の生徒達だけとなり、急に静けさが辺りを包む。

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11:50 チューニング室

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各学校にはそれぞれ本番前にチューニングとリハーサルの時間が割り当てられている。チューニング室に移動する直前、何人かの生徒に今の気持ちを聞いてみると、1・2年生は「コンディションはバッチリです。みんなの気持ちも盛り上がっています!」「緊張感は程々でいい感じです!」と明るい表情で答えてくれた。
でも部員みんなを引っ張る役目を担う高校3年生の部長は、まだまだ緊張を緩めない。このように後輩が伸び伸びとコンクール本番に臨めるのも、先輩がしっかりしているからだろう。
チューニングが始まると本番直前のみんなを落ち着かせるためか、朝は大きな声を張り上げていた合田先生も静かなトーンで「各自できっちりチューニングして。」と指示を出す。その後ロングトーンをみんなで行い、ハーモニーを合わせ、さらに楽器を下ろしてハミングで音程の確認を行う。いつもと違う環境でそわそわしている部員のみんなに、合田先生は「今日の朝の音、あの感じでいくよ。今はまだお前達自身のいい音が出ていない。イメージが浅い。集中力散漫になるな。気持ちを前に出して!」と、生徒達に敢えて緊張感を与え、集中力を高める言葉を発する。残り時間の5分は各自に与えられ、ひたすら音を鳴らす人、楽器は鳴らさず目を閉じてイメージトレーニングをする人、それぞれが個々の最終調整を行なった。

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12:30 リハーサル室

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リハーサル室へ移ると、係の人が4人、進行スケジュールの管理を行なっている。本番を目前にして緊張感が高まる中、ここでは本番さながらの通し練習を行う。合田先生も言葉少なく真剣な表情で指揮を執り、生徒達も周りの音に耳を澄まし音程やリズムに集中する。

課題曲と自由曲の通しが終わると、最終調整とパートの確認を行う。限られた時間の中、生徒達が本番で最高のパフォーマンスを演じるために必要なことは全てやった。「ここまで来たら、今まで練習してきた集大成を本番でぶつけよう!」、そんな先生や生徒達の並々ならぬ気迫が、私達取材スタッフにもひしひしと伝わる。

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13:00 舞台本番

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舞台裏から舞台袖へ抜け、いよいよ本番。セッティングを済ますと舞台がライトアップされた。アナウンスが始まる。
「プログラム13番、東播地区代表 県立農業高等学校、
課題曲 Ⅳ、自由曲 G.プッチーニ作曲 西山潔編曲 歌劇「トスカ」より 冒頭、ファルネーゼ宮殿、勝だ、星は光りぬ、刑場へ、終結部 
指揮は合田 尚也」
合田先生が観客に向けて一礼すると、観客から拍手が起こる。いよいよ本番、彼等がどんな演奏をしてくれるか楽しみだ。
まずは課題曲。指揮者の手が動くと、今朝私達が学校の音楽室で聴いた音色がホール内に響いた。県立農業高等学校の課題曲はマーチ「ブルースカイ」。長いイントロは表情豊かに、続く主部も軽やかで爽やかな音色を聴かせてくれた。流れるようなリズム感に、練習の成果が感じられる。

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自由曲は『歌劇「トスカ」より』。導入部の表現が美しく、物語の世界が上手く表現されていた。総勢40名という少人数ながら、それぞれがしっかりとホールに音を響かせていた。クラリネットとフルートのハーモニーも情感たっぷりに美しく、「星は光りぬ」で鳴るチャイムの音も絶妙なタイミングで哀愁を誘う。

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途中パーカッションパートが鳴らすピストルの音は、私達も練習で見ることのなかったパフォーマンスで、思わず座席から飛び上がるほど驚いた(歌劇「トスカ」を見たことのある方ならご存じだろうが、オペラではトスカの恋人が銃殺されるシーンである)。
後半のトランペットの高音のソロも見事に決まり私達も一安心。全体的なダイナミクスやハーモニーのまとまりもよく、観客にしっかりと「県農サウンド」を聴かせることが出来たのではないだろうか。

13:30 写真撮影

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演奏が終わり舞台を下りると、ホールの外に設けられた写真撮影場所へ楽器を持って移動する。生徒達がその場に現れると、私達取材スタッフも応援に来ていた生徒達の家族も温かい拍手で出迎えた。生徒達の誰もがすがすがしい表情で、合田先生も演奏に満足した様子だった。集合写真の前に、まずは各パート毎に写真を撮る。ホルンパートやトロンボーンパートはベルの部分を帽子の様に頭にかぶるなど、茶目っ気を見せてくれた。みんな夏の強い日差しにも負けない、本当に眩しい笑顔だった。さっきまで気を張っていた部長からもようやく笑みがこぼれ、その様子に私達取材スタッフも胸が熱くなった。

14:00 楽器を搬出

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写真撮影が終わると、すぐさま楽器を搬出する。演奏が終わって、みんな肩の力が抜けた様子だが、ここでも副部長がしっかりと指示を出す。朝トラックに積み込んだ時と同じようにパーカッションを毛布でぐるぐる巻きにして積み込み、楽器を積み込んだトラックは一足先に学校へ。

14:20 ミーティング

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楽器の搬出が終わるとやっと食事、でもその前にミーティング。合田先生の第一声は、「みんな、お疲れ様でした。演奏良かったと思います!」と今までの練習が報われる嬉しい一言。それから「この後お弁当を食べてください。その後はせっかくの機会なので、できるだけ他校の演奏を聴いてください!」と今日のこれからの予定を伝えた。生徒達も「他校の演奏を聴くのは楽しみ。いろいろ聴きたい!」「いい曲に出会えるかも!」と、出番を終えてすっかりリラックスした様子だ。

14:30 お弁当タイム ~ コンクール後半の部を鑑賞

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いよいよ昼食。特に指定の食事場所があるわけではないので、ホール外にある植え込みの木陰で、家から持参したお弁当をみんなで和気あいあいと食べている。本番が終わり演奏の出来栄えにも納得してか、非常に明るく和やかなムードだ。そんな中、私達は「今日の演奏に自分で点数をつけるとしたら何点?」という質問を生徒に投げかけてみた。すると、「70点くらい」と答える生徒の声が多かった。
演奏の出来にはそれなりに納得している様子だが、やはり個々に反省点が思い浮かぶのだろう。
しかし、「全体に音に響きがあって、とっても満足!」「歌劇「トスカ」の終わりのトランペットソロ、心配してたけど上手くいって本当に感動した!」「チューバと弦バスの掛け合いがすごく綺麗だった!」と、県農サウンドには満足している様子。演奏が終わりホッとしながら食べるお弁当は、さぞ美味しいことだろう。
兵庫県立農業高等学校 吹奏楽部 昼食を終えると、生徒達はコンクールに出場する他校の演奏を聴くため、ホール内の客席に向かう。

15:35 突撃インタビュー ~コンクール本番を終えて~

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18:40 閉会式・成績発表

コンクール出場校の全ての演奏が終わり、いよいよ閉会式。成績発表を見届けるために県農の生徒達もホール内の前方右の客席に固まって座る。舞台の緞帳が上がると、そこには各校の部長が出演順に並ぶ。主催する朝日新聞社からの挨拶が終わると、いよいよ成績発表だ。出演校全てに金賞・銀賞・銅賞のいずれかが授与される。プログラム順に発表されるため、県立農業高等学校は13番目。次々と成績が発表されていく。
12番目の仁川学院中学高等学校の成績が発表された。現在のところ、金賞3校、銀賞5校、銅賞4校。いよいよ、県立農業高等学校の番だ。
 「プログラム13番 県立農業高等学校 銀賞」

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▲当日のプログラム
(演奏曲目及び受賞成績)はこちら

銀賞ということもあり、発表直後の客席の生徒達の反応は静かだった。銀賞で悔しいと思う生徒もいれば、ホッと胸を撫で下ろした生徒もいたことだろう。実際私達取材スタッフが客席で聞いた県立農業高等学校の演奏は素晴らしかったし、「もしかすると・・・」と期待させるものでもあった。しかし、結果は残念ながら銀賞だった。それだけ参加団体数の多い兵庫県吹奏楽コンクールで金賞を受賞することは大変なことだと改めて感じた。
8月26日に行なわれる関西吹奏楽コンクール兵庫県代表には滝川第二高等学校、県立明石南高等学校、県立伊川谷北高等学校、県立兵庫高等学校、姫路市立琴丘高等学校の5校が決定し、グランプリには県立明石南高等学校が選ばれた。県立農業高等学校と同じ東播地区代表だ。代表に選ばれた5校には次の関西でも素晴らしい演奏を観客に聴かせてくれることを期待したい。

19:10 コンクール閉幕 ~帰路へ

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閉会式が終わり舞台の緞帳が下りても、ホール内はまだコンクールの余韻に包まれていた。「コンクールが終わった」という充実感と脱力感、喜び、悲しみ、悔しさ、その他様々なドラマがそこにはあった。このホールにやって来た朝の情景が遠い昔のように感じられる。ざわめくホールを一歩外に出ると、西の空がわずかに明るいくらいで、外はすっかり暗い。今からそれぞれの学校が、それぞれの想いを胸に帰路につく。

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県立農業高等学校の生徒も控え室にカバンを取りに戻り、帰り支度を行なう。コンクールが終わりどっと疲れが出たのか、誰もが口数が少ない。結果が悔しいのか、うつむきがちに歩く1年生がちらほら見える中、真っ直ぐ前を向いて歩く先輩達を頼もしくもあり誇らしく感じた。カバンを持ってバス乗り場へ向かう頃には、1年生にも笑顔が戻る。私達の取材もここまで。全員がバスに乗り込むと、県立農業高等学校へ向けてゆっくりと出発するバスを私達は笑顔で見送った。バスの中ではどんな会話がされているのだろうか。

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今日のコンクールのこと、今までの練習のこと、今後のこと、部活の思い出、プライベートなこと・・・。それともぐっすり眠っているのだろうか。とにかくみんなお疲れ様。3年生はこれでクラブを引退するが、私達の心に響いた力強い県農サウンドはきっと今後も引き継がれ、来年はよりレベルアップしてこの舞台に帰ってきてくれることだろう。