早稲田摂陵高等学校ウィンドバンドを支える4人の先生

西出孝明先生
西出孝明先生 プロフィール
楽

西宮市立今津中学校に入学後、吹奏楽部に入りクラリネットを始める。中1の時は顧問である鈴木竹男先生のもとで吹奏楽を学ぶ。
中2になると鈴木先生の後任の顧問として得津武史先生を迎え、吹奏楽の指導を受ける。中学卒業後は阪急少年音楽隊に入って3年間吹奏楽を行い、卒業後は阪急百貨店に入社。
仕事のかたわら阪急百貨店吹奏楽団で吹奏楽を続ける。
平成3年に人事異動で吹奏楽コースの前身となる阪急商業学園に赴任、その後向陽台高等学校を経て今に至る。
早稲田摂陵高等学校ウィンドバンド監督。

井上学先生
井上学先生 プロフィール
吹奏楽に永遠の青春を求めて

姫路市立東光中学校に入学後、吹奏楽部に入りトロンボーンを始める。その後兵庫県立福崎高等学校、京都産業大学に進学。
大学時代には吹奏楽部で指揮者を経験。関西学生吹奏楽連盟主催の合同演奏会の代表指揮者に選ばれ、その時の客演指揮者である鈴木竹男氏から指導を受ける。
卒業後は太陽神戸銀行(現三井住友銀行)に入社。銀行内で吹奏楽団を創設。
5年前に鈴木竹男氏から誘いを受け、東京から単身赴任で向陽台高等学校に赴任、今に至る。

川口尚先生
川口尚先生 プロフィール
Forward March

西宮市立上甲子園中学校に入学後、吹奏楽部に入り、トロンボーン、ドラムメジャーを始める。中学卒業後は阪急少年音楽隊に入隊。
そこで3年間吹奏楽を行い、卒業後は阪急百貨店に入社。
2年目である平成2年に人事異動で阪急少年音楽隊に赴任。
その後向陽台高等学校を経て今に至る。
早稲田摂陵高等学校ウィンドバンド指揮者。

清永美佳先生
清永美佳先生 プロフィール
夢

吹奏楽コース高校1年の担任。担当教科は理科。
今年の春、吹奏楽コースが向陽台高等学校から早稲田摂陵高等学校に移管されたことを機に吹奏楽コースに抜擢され配属となる。
女子生徒のみで構成される早稲田摂陵高等学校ウィンドバンドを女性の立場からサポートする。


取材班:
今年の春、向陽台高等学校吹奏楽コースは早稲田摂陵高等学校吹奏楽コースとして移管されましたが、その経緯をお聞かせください。
早稲田摂陵高等学校ウィンドバンドを支える4人の先生
井上先生:
早稲田摂陵高等学校吹奏楽コース(早稲田摂陵高等学校ウィンドバンド)の元を辿れば、1957年に創立された阪急百貨店の社員養成機関である阪急少年音楽隊にさかのぼります。そこに入隊すると全員が将来阪急百貨店に入社できるのですが中学校卒業の資格で阪急百貨店に入ってしまうような形になっていたので、向陽台高等学校と技能連携校の契約を結び、阪急少年音楽隊に所属しながら向陽台高等学校にも通うという方法をしばらくとりました。
早稲田摂陵高等学校ウィンドバンドを支える4人の先生 その後、阪急百貨店人事部の採用形態変更にともない阪急少年音楽隊の生徒と指導者の全員が向陽台高等学校に移管されました。こうして向陽台高等学校吹奏楽コース(向陽台高等学校ウィンドバンド)が生まれました。
向陽台高等学校は通信制・単位制の学校です。ですが吹奏楽コースの生徒は全日制の学校と同じ授業形態をとっていましたので同じ敷地内にある早稲田摂陵高等学校に移管しました。
取材班:
早稲田摂陵高等学校の吹奏楽コースの特徴をお聞かせください。
早稲田摂陵高等学校ウィンドバンドを支える4人の先生
井上先生:
うちの吹奏楽コースは1学年30名の少人数体制のもと、音楽・勉学・生活がバランス良くレベルアップできることを目標として教育しています。また、プロの音楽家育成を第一の目的とするのではなく、卒業後も音楽を愛する立派な社会人として活躍する人材育成を目指しています。
西出先生:
人数が少ないので進路指導も生活指導も一人ずつきっちりできますね。それこそ本当の指導ですね。最後の最後まで面倒を見ています。生徒に対しては非常に面倒見の良い学校だと思いますよ。その上、少人数だとほぼ全員がレギュラーとしてコンクールやコンテストに出場しているので、大変充実した演奏活動を行っていると思います。
井上先生:
卒業後も面倒を見ていますね。この前も大学4年生の教え子に履歴書の書き方を指導しました(笑)。
清永先生:
卒業生がたまに学校に来てくれて、現役メンバーの指導をしてくれます。彼女達は卒業してからもこちらの先生に悩みを相談していますので、絶対的な信頼関係ですよね。

取材班:
吹奏楽コースの授業カリキュラムについてお聞かせください。
井上先生:
普通科の吹奏楽コースとして、全く普通の高等学校と同じように授業をしています。授業終了後に全学年の生徒全員で吹奏楽を行います。時間で言えば14時半~18時に行っていますので、全く普通の高等学校と同じです。授業科目も若干「音楽」の科目が他の学校に比べて多いぐらいですかね。「普通科の吹奏楽コース」なので、練習時間を保証しながら、指導者がちゃんとついて練習を行います。
川口先生:
あと授業のカリキュラムとして、各楽器のスペシャリストにレッスンに来ていただいています。これは早稲田摂陵高等学校吹奏楽コースの特色の一つです。
井上先生:
吹奏楽をする上では非常に有難いことですよね。

早稲田摂陵高等学校ウィンドバンドを支える4人の先生
取材班:
勉強についてお聞きします。吹奏楽コースということなので、どうしても生徒達は勉強より吹奏楽の方に重きを置いてしまいがちだと思うのですが、それについてはいかがですか。
清永先生:
そうならないように心がけています。
井上先生:
音楽をやっているから英単語ができないっていうのはすごく嫌なので。生徒達には一つの分野に突出するのではなく、鈴木竹男氏がいつも話していた「音楽」「勉学」「生活」を頂点とした三角形がバランスよく大きい、そんな人間になって欲しいと思っています。

取材班:
先生方は生徒に音楽指導する際にどのようなことに気をつけていますか。
西出先生:
私の場合、自分の体験を中心に教えています。自分が指導を受けてきて自然と備わってきたことを、生徒にしっかり伝えていくやり方です。あとは、「この曲はこのように演奏できるはず」といったあるべき形が自分の頭のどこかに必ずあって、自分が思っている曲のイメージ通りに生徒達が演奏してくれているかどうかということを指導するやり方ですね。おそらく井上先生や川口先生も同じだと思います。
井上先生:
同じですね。よくインタビューを受ける時に聞かれるんですよ、「指導する際に気をつけていることで優先順位の高いものは何ですか。ピッチですか、リズムですか」って。でも音楽面から入らずに技術面から先に入ることはないわけで、そんなことを考えてやっていません。目の前で起こっていることを冷静に自分の頭のモニターに映し出して、演奏のダメなところを指導するという感じですね。

取材班:
指導者として苦労されていることをお聞かせください。
西出先生:
このバンドの特徴として、出来るだけ聴衆の層や演奏の場面にあわせて選曲をしますのでそれには苦労しますね。同じ演奏を繰り返しできたら楽かもしれませんが、面白さ半減です。しかし、生徒も大変だと思います。その度に曲の暗譜をしないといけないから。だから、うちのバンドには楽譜は大量にありますよ(笑)。
川口先生:
たくさんのお客さまが演奏を楽しみにしてくれていますし、やっぱりそれに応えないといけないって思うんですよ。
清永先生:
このバンドは昔からの一般のファンの方がたくさんおられ、「バンドの行事を見たいので」と、学校にバンドの年間スケジュールの問い合わせがあります。保護者やOB・OGでない方からの問い合わせです。はじめて電話を受けた時に、驚きました。
川口先生:
定期演奏会をザ・シンフォニーホールで毎年2回やらせていただいているのですが、おかげさまでいつも満員で、幅広い年齢層のお客様にお越し頂いていると思います。

取材班:
早稲田摂陵高等学校ウィンドバンドはマーチングにも力を入れておられますが、曲や動きは川口先生がお考えになられるのですか。
川口先生:
そうですね。大体1年に3つほど作ります。3000人の吹奏楽などでのフィールドマーチング、マーチングコンテスト用のフロアマーチング、アマチュアトップコンサートなどでのステージマーチングです。毎年、選曲にすごく悩みます。

取材班:
マーチングにおいて、最近は各学校が趣向を凝らした演奏スタイルを取り入れていますが、早稲田摂陵高等学校ウィンドバンドとしては今後どのような方向に進んでいきたいとお考えですか。
川口先生:
うちのマーチングのスタイルも独自のスタイルを持っています。それは世界で初めてステージマーチングを行った阪急少年音楽隊から続いている伝統で、スタイルとして完全に確立されているんですよ。マーチングに限らず普通に街を歩くパレードでもそうです。その場その場の約束事や形が完全にスタイルとしてでき上がっています。しかし、最近はマーチングのスタイルもどんどん変わってきていて、いろんなスタイルで発展しています。でも、うちは「このスタイルでいく!」と決めています。貫いていこうという自分たちのこだわりがあります。そのベースとなるスタイルを大切にしながら、新しいものを取り入れていきたいですね。生徒達もそれを理解して練習してくれています。
井上先生:
戦前の第1回全日本吹奏楽コンクールが始まった頃は、行進してその後座奏するという形だったんです。だから鈴木竹男氏はよく「良きコンサートバンドは良きマーチングバンドでもある」とおっしゃられていました。我々3人とも、そのことを意識して指導しています。

取材班:
早稲田摂陵高等学校ウィンドバンドのマーチングのスタイルでは、コンテスト等で評価される時に不利なことはないのですか。
川口先生:
特にないですね。今練習を行っている全日本マーチングコンテストのジャンルは、第1回大会からそうでしたけれど、うちが目指しているものにぴったり合っていると思います。コンテストである限り基本的な動作やいい演奏を求めて審査員からの評価も大切ですし、コンテストであってもお客様に楽しんでもらえるマーチングでなければと思っています。

取材班:
次に吹奏楽コンクールについてお聞きしたいと思います。吹奏楽コンクールに参加されるようになったのはここ5年ほど前からですが、参加されるようになった経緯をお聞かせください。
西出先生:
「何故今まで参加しなかったのか」という質問の答えとしては、「参加できない事情があった」ということです。それは先ほどお話しした通り、その当時はまだ阪急百貨店の企業内高校だったので、そこを卒業したら阪急百貨店の社員になりますよね。そのための実地訓練ということで、夏はお中元のギフトのお手伝いにバンドメンバー全員で行っていたんです。毎年、お中元・お歳暮の時期は2週間売り場に立つことが決まっていたので、夏に行われる吹奏楽コンクールの練習ができる状況になかったんです。マーチングコンテストはお中元が終わっての9月ですので、ずっと出場しています。向陽台高等学校ウィンドバンドに移管されるまでは、そういう理由で吹奏楽コンクールには出場できませんでした。向陽台高等学校ウィンドバンドに移ってからは、夏休みに練習時間が取れるようになったので、出場できるようになりました。

取材班:
実際に吹奏楽コンクールに出場してみて5年経ちますが、今の感想をお聞かせください。
早稲田摂陵高等学校ウィンドバンドを支える4人の先生
井上先生:
例えばコンクール強豪校の中には、夏の吹奏楽コンクールが終わるとその年の11月ぐらいから来年の構想を練って、自由曲のアレンジを頼んで、早々と練習に取り掛かる学校も結構あります。でもうちの学校の場合はそうではなく、4月にならないと何人入学してくるかがわからないし、新入生が入学してパート編成をし直してから、「今年のコンクールはどうしよう」っていうのが始まるわけですよね。そうこうしているうちにブラスエキスポがあって、3000人の吹奏楽があって、7月になったら吹奏楽コンクールという感じですね。他の演奏活動を辞めてコンクールだけに絞ったら、もう少しいい成績を収めることができるかもしれません。でも、そんなことよりもっと大切なことがあると思っていますし、現状では今ある条件の中でベストを尽くすことを考えています。うちのバンドの場合、吹奏楽コンクールで金賞を狙いすぎることで得るものと失うものを考えたら、今は失うものの方が多いと思うんですよ。果たして生徒達にとってそれがいいのかなって思いますね。でも生徒達には「マーチングとコンクールを天秤にかけて、どちらが大事ってことではないよ」と教えているつもりです。

取材班:
早稲田摂陵高等学校ウィンドバンドは海外でも演奏活動を行われておりますが、そういった計画はどのようになされているのですか。
西出先生:
お金を積み立てて3年に1度海外遠征を行っています。2003年はイタリア・サンレモ国際フラワーフェスティバル、2006年はスペイン・マグダレナフェスティバル、そして今年はフランス・マントンレモン祭り ニースカーニバルに参加しました。
井上先生:
海外遠征については音楽事務所を通じて今までの遠征は全て各国からご招待いただいております。そのため、往復の飛行機代だけは自分達で支払いますが、海外での滞在費や食費は全部先方で持ってくれるんですよ。
西出先生:
行き先についてはこちらからも希望を伝えます。音楽事務所もこの国はどうですか、あそこの国はどうですか、といろいろ勧めてくれますが、「こちらの方としては日程が合わない」とか「その期間はコンクールで忙しい」とか「この時期しか日にちが取れないので、この時期に遠征できる国はどこですか」とか、交渉を重ねて決めています。大体1、2月頃に行くことが多いのですが、2、3月には定期演奏会もあるので、その辺りも計算しないといけないので、いつもなかなか決めるのが難しいですね。

取材班:
阪急少年音楽隊から数えるとたくさんのOB・OGの方がおられると思いますが、その方々と今でも何か関わりを持たれておられますか。
川口先生:
現在のところOB・OGあわせて約700人います。OB・OG会があり支援活動をしてくれています。
早稲田摂陵高等学校ウィンドバンドを支える4人の先生
西出先生:
定期演奏会では、阪急少年音楽隊の卒業生である阪急阪神百貨店吹奏楽団の男性メンバーが中心になってお手伝いをしてくれています。あと向陽台高等学校吹奏楽コースの卒業生もお手伝いに来てくれますね。3000人の吹奏楽でもたくさんの方がお手伝いに来てくれています。今年なんかはうちの現役メンバーよりもお手伝いの方の人数の方が多かったですよ、80人、90人ぐらいでした。OB・OGとの直接の関わりで言うとそんな感じです。

取材班:
早稲田摂陵高等学校ウィンドバンドでは、生徒の保護者の方とはどのような関係を築いておられますか。
井上先生:
応援してくださるのは大変嬉しいと思っています。但し、保護者会には「側面的な支援だけで結構です」というように、保護者の方にはあまり負担をかけないようにしています。
西出先生:
飲み物一つとっても積立金の中から公平に使うようにして、保護者に負担をかけないようにしています。

取材班:
先生方の思い描く理想のウィンドバンドとはどのようなものですか。
西出先生:
今思っているのは、1バンド80~90人ぐらいの人数で、余裕をもった音楽活動を行いたいですね。あまり人数が多すぎてもきめ細かい指導が難しくなるし、お互いに通じ合うものもなくなります。80~90人ぐらいが一番いいんじゃないかと思いますね。
井上先生:
地域社会に愛されるバンドを目指します。大阪といえば早稲田摂陵高等学校ウィンドバンドと言われるように。
川口先生:
もっと全国の人に早稲田摂陵高等学校ウィンドバンドを見て聴いてもらって、知ってもらえるようになって欲しいですね。
井上先生:
あとは、生徒同士の笑顔が絶えないバンドであって欲しいですね。

取材班:
では最後に生徒達にメッセージをお願いします。
井上先生:
毎日忙しいと思うけれど、充実した3年間を送って欲しいと思います。
西出先生:
この高校生活3年間っていうのは、これからの人生の方向性が決まるほど大事な3年間だから、おもいっきり音楽をして、おもいっきり勉強をして、自分の行きたい進路に進んで欲しいと思います。
早稲田摂陵高等学校ウィンドバンドを支える4人の先生
川口先生:
阪急少年音楽隊、阪急商業学園ウィンドバンド、向陽台高等学校ウィンドバンド、早稲田摂陵高等学校ウィンドバンドと名前は変われども、バンドに所属している生徒達がやっていることはずっと変わりません。その伝統を本当に大事にして、誇りを持って活動して欲しいと思います。それと、今年から早稲田摂陵高等学校ウィンドバンドに名前は変わったんだから、「ずっと続いている伝統を自分達が引き継いでやっていくんだ」っていう気持ちと、「今年から改めて再出発なんだ。自分達がその最初のメンバーなんだ」っていう両方の気持ちを持って頑張って欲しいと思いますね。
     
取材班:
長時間にわたりインタビューにご協力いただきありがとうございました。早稲田摂陵高等学校ウィンドバンドの今後の益々の発展をご祈念いたします。

早稲田摂陵高等学校ウィンドバンドを支える4人の先生