吹奏楽の中でも、管楽器の響きを支える重要な「縁の下の力持ち」的存在のコントラバス。
けれどもなかなか指導してもらえる機会が少ない…。
そんなコントラバスの皆さんのために、シエナウインドオーケストラのコントラバス客演奏者、鷲見先生に基本的な(けれどもとても大事な)コントラバスの扱い方を教えてもらいました。
初心者の人も経験者の人も必見です!
コントラバス ワンポイントレクチャー

◆コントラバスについて
よく吹奏楽の世界で「コントラバスは聴こえない」と言う人がいますが、だいたいこの場合、「単純に弦楽器の響きを聴き取れていない」または「奏者が正しい奏法で演奏していない」といった事が原因です。正しい奏法で演奏すれば、コントラバスは吹奏楽において強い存在感を出すことが出来ます。

また、よく勘違いされがちですが、テューバと音量で張り合う必要は全くありません。コントラバスは「響き」を出すために吹奏楽に加わっている楽器です。単純に音量が欲しければテューバやバスクラリネットを増やせば良いのです。コントラバスは「聞こえるべき箇所できちんと聞こえれば良い」と考えましょう。その為には力を抜いて演奏する事が最も大切です。

よく指揮者、顧問の先生が「コントラバス聞こえない」「コントラバスもっと大きな音出せ」と要求する場面を見かけますが、それによって松脂を塗りたくり、右手に力を入れ弓を握りしめて弦に強く押し付けて汚い音でゴリゴリ弾き、それによって弦の振動を殺して逆にどんどん音が遠鳴りしなくなるという悪循環に陥るケースがほとんどです。指導者から「大きな音で」と言われたら、むしろ力を抜いて演奏する事で楽器が鳴るようになると意識して下さい。

こちらでは、ごく基礎的な部分だけ解説していきます。
もしもっと詳しく知りたいと思ったら、僕が執筆した教則本をぜひ活用してみてください。

また、コントラバスにはいろんな構え方、弓の持ち方があります。ここで紹介しているのはあくまでも基本的なもの。「絶対こうじゃなきゃいけない」ものではありません。ただ、長い歴史の中で多くの人が研究してきて残ってきた「王道」なので、まずはこちらを身に付けることをおススメします。


◆楽器、備品の管理について
・弾き終わったら楽器は綺麗に拭いてあげましょう。飛散した松脂がこびりついて取れなくなってしまいます。
・弓の毛は弾く時に毛を張り、終わったら緩めます。とりあえず毛を張ってすぐに松脂を塗ってしまう人が多いのですが、数分間弾いて「松脂が足りない」と思った時だけ塗るようにしましょう。塗り過ぎるとガリガリ汚い音になってしまいます。
・弓の毛を張り過ぎると徐々に棹からしなりが失われてしまいます。強く弦に押し付けたとき、棹と毛の間に1cmくらい隙間が空く程度の張り方が良いでしょう。
・松脂は暑いと溶けてしまい、ケースにこびりついて出て来なくなる事があります。それを防止する意味で、コンビニのビニール袋を丸く切って松脂を包んでからケースに片づけるようにしましょう。


◆楽器の構え方
鷲見精一 ・両足を肩幅くらいに開いて立ち、腰骨辺りに楽器をはめ込むようにして支えます。
・弓をまっすぐ構えたとき、弓が指板の切れ端くらいにくる高さが良いでしょう。
・背の低い人は少し楽器を自分寄りに傾けると楽になります。
・右足が楽器より前に出ないよう気をつけましょう。
 E線を弾いたときに右手が右足にぶつかってしまいます。







◆右手について
コントラバスは左手で音程、右手で音色を作ります。
ジャーマン式
《弓の持ち方(ジャーマン式)》

人差し指・中指をくっつけて真ん中に棹を乗せ、小指・親指で弓を支えます。指は握手をする時のようにカーブを作ります。
大切なのはギュッと握りしめないことです。



美しい音を出す右手のポイント
・弓をたくさん使うこと(肩を支点・肘をクッションとして、振り子のようにブンブン腕を振るイメージ)
・弦を真横に振動させるため、弓が弦に対して直角になるように演奏する。
 (例えば楽器が真っ直ぐに立っていれば、弓は床と並行になります)
・演奏中に弓が上下に滑らないようにする。(つまり、同じ場所を弾くようにする)
 同じ位置をキープ出来ないと音がかすれる原因になります。
・弓を置くポイントを指板の切れ目辺りにすると、弓が同じ場所を弾いているかの目安になりますし、その場所は弦がよく振動し、柔らかくて太い響きを出す事が出来ます。
・松脂を塗りたくったガリガリ、ゴリゴリという傍鳴りする実音ではなく「ブーン」「ブンッブンッ」と遠くまで鳴る「響き」を大切にしましょう。



◆左手について
基本フォーム
左図が左手の基本フォームです。

左手は人差し指が1、中指が2、薬指が3、小指が4と番号が決まっています。
3は高いポジションでのみ使用します。低いポジションでは2と3をくっつけておきましょう。

1と2、2と4がそれぞれ半音、1と4が全音の幅になっており、この形を崩さずに音を取ることで左手を定規代わりにして正しい音程を取ることが出来るようになります。


※3(薬指)はしばらく使用しません。3の指は弦に触らず、2に添えるようにして構えるか、或いは2と3をワンセットにしても構いません。いずれにせよ、「正しい音程が取れる」事が大前提です。

よくありがちなのが、1や2を押さえている時に小指が立ち上がってしまっているケース。左手の指は「全てが常に弦の近くに待機していること」が理想的です。そうすれば速い音符の時に指がバタバタせずに済みますし、何より疲れにくくなります。

左手の癖は楽器を練習している時に注意・意識して練習するのが一番ですが、楽器を持っていない時でも、指を個別に動かす運動をしてみるのも良い練習になります。楽器に慣れてくると、「指の力で押さえる訳ではない」という事が分かってくると思いますが、あまり楽器に触る時間が持てない人はVari Gripやグリップマスターといった指に力をつける道具もあるので、活用してみるのも良いでしょう。くれぐれもやり過ぎて指を壊したり筋肉をつけすぎないようにだけ注意してください。

コントラバスには基本となるポジションがあります。教則本などでチェックしましょう。
よく見かけるのが1や2の指だけで曲を演奏する「1本指奏法」ですが、これだと絶対に速い音符を弾くことが出来ません。左手の基本フォームには無駄なく演奏するための意味があります。

例えば、下のスケール、あなたはどう演奏しますか?
楽譜01

これを左手の正しいフォームで演奏すると、
楽譜02

こうなります。このとき、左手は指を動かすだけで上下に動く必要はありません。
ちなみに、このスケールで使用しているポジションが最も音が低い位置の「ハーフポジション」です。

※左手のシフト(ポジションを移動する動作)について

楽譜03

例えば(1)を演奏するときは上記のフィンガリング(指使い)が理想です。

まずハーフポジションに構えて2の指でAの音を取ります。そのまま4の指を押さえればBの音が出ますが、そうするとB→Cと同じ指で取らなければなりません。同じ指での移動はテンポが速くなると弾きにくくなり、効率的ではありません。
そこで、「4を置く場所に1を持っていく」と考えます。4の場所、つまりBの位置に1の指を置き、正しい左手の基本フォームが出来ていると、どうでしょう。自然と4の指でCの音が出せますね。

次に(2)を演奏するときは、まず「ハーフポジションの2の指の位置に1の指を移動」してAの音を取ります。これがハーフポジションの次に高い「ファーストポジション」の基本位置になります。そのまま4の指を押さえると1→4の指でA→Hが取れます。
その後、「4の指の半音高い位置に1を持っていく」と考えます。すると1の指でCが取れ、そのまま4を押さえればDが取れますね。

このように、コントラバスの音程は、左手の基本フォームがきちんと出来ていれば、前後の音との関係から正しい音程を取ることが出来るようになります。最初はなかなか音程の幅を覚えることが出来ないでしょうから、目印として指板に小さなシールを貼るのも手段の一つです。ただ、指の力がついてくるとこのマークの位置は少しずつずれてきますし、ポジションマークばかり見ていると楽譜の情報を見落としますし指揮者とのコンタクトも出来ませんから、慣れてきたらシールを剥がしましょう。

最初は弦を押さえるのが大変かもしれませんが、低いポジションのロングトーンやゆっくりのスケール練習などで、弦を押さえる感覚に慣れていきましょう。あまりに弦高(指板と弦の距離)が高いようであれば、指を壊す可能性があるので先生にお願いして楽器屋さんに調整して貰いましょう。

また、CDで豊かな音色を聴くこと、テレビやインターネットでいろいろな人の奏法を見ることも良い勉強になりますし、何より実際に演奏会場に行くと、CDなどでは分からない「響き」を体験する事が出来ます。ぜひ積極的に会場に足を運んでみて下さい。

皆さんがコントラバス本来の奏法、役割を知り、音楽とコントラバスを好きになってくれたら嬉しいです。





コントラバス教本 入門者のためのコントラバス教本

吹奏楽部の生徒さんや顧問の先生が、新しく入部する後輩たちに正しく伝えていけるように考えて書かれたコントラバス教本です。


■鷲見 精一 著
■ヤマハミュージックメディア [定価 1,400円+税]
■2015年3月14日発行







コントラバス教本 鷲見 精一(すみ せいいち) 演奏経歴
故・塩谷晋平氏のもと私立関東第一高等学校2年次にコントラバスを始める。吹奏楽部にて2年連続全日本吹奏楽コンクール銀賞受賞。東京音楽大学ではオーディション選抜メンバーとしてアメリカ演奏旅行に参加しカーネギーホールなどで演奏。音大卒業後ベルリンへ留学、元ベルリンフィル首席コントラバス奏者R・ツェパリッツ氏に師事。バーデン・バーデンにてカールフレッシュ・アカデミー修了。
帰国後日本国内のオーケストラへの客演を中心に演奏活動開始。
これまでに客演した団体はNHK交響楽団、東京都交響楽団、東京交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、東京シティフィルハーモニック管弦楽団、日本フィルハーモニー交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団、神奈川フィルハーモニー交響楽団、群馬交響楽団、札幌交響楽団、名古屋フィルハーモニー交響楽団、シエナ・ウインドオーケストラ、東京佼成ウインドオーケストラ、ジャパン・シンフォニエッタ、相模原室内合奏団、熊川哲也Kバレエシアターオーケストラ、のだめオーケストラなど。東京交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団、Kバレエシアターオーケストラ、のだめオーケストラでは客演首席奏者も務めた。
また北九州国際音楽祭、草津国際音楽祭、富士山河口湖音楽祭、木曽川音楽祭、沼津音楽祭などの音楽祭への出演多数。またNHK Eテレ「N響アワー」「クラシック音楽館」、テレビ朝日「題名のない音楽会」などメディアへの出演も多い。2015年には映画「マエストロ!」にコントラバス奏者役で出演。
2008年よりシエナ・ウインドオーケストラに客演。日本管打楽器連盟や東京芸術劇場ブラスウィークなどの講習会講師をはじめ、全国中学・高校吹奏楽部への出張指導も務める。
クラシック以外のジャンルではTHE ALFEE、渡辺美里、さだまさし、岡本真夜、姿月あさと、伊東たけし(T-SQUARE)らのサポートオーケストラとしてもツアー・ライヴに出演。
管弦楽・吹奏楽・室内楽にアーティストサポートなど演奏活動の傍ら全国中学校・高等学校吹奏楽部への出張指導、コラムの執筆など多方面で活動。現在ドルチェ音楽学園、ミュージックスクールKMC講師。2015年、YAMAHAより「入門者のためのコントラバス教本」発売。
これまでにトランペットを田宮堅二、吹奏楽を塩谷晋平、コントラバスを鷲見四郎、永島義男、W・ギュルトラー、R・ツェパリッツの各氏に師事。
【2015年4月8日 現在】